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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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一般の児童は、まず立ち寄ることはない場所。

「・・・朋尋、いるのか」

静かに扉を開ける。埃とカビの匂いが鼻をつく。ブラインドの下りた窓からは光が入らず、薄暗い。ところ狭しと積み上げられた本。古ぼけた書架に並ぶ色あせた背表紙。書架の隙間を縫って奥へ進むと、古ぼけた長机が並んでおり、そのひとつに朋尋が座っていた。どの机にも本が積み上げられているが、朋尋の場所はすっきりと片付けられている。

「・・・ああ、伊吹だ」
「何してるんだよ。保健室行こう」
「だめだ」
「え?」

青ざめた顔が静かに声を紡ぐ。その聞いたことのない、感情の抜け落ちた親友の声に、伊吹の中の不安が膨らんでいく。

「ここにいないと、だめなんだ」
「・・・どうして?」

待っているんだ、と彼は呟くように言った。

「待っているって・・・誰を・・・?」

遠くを見つめるような眼差し。その虚ろな瞳が、机の上に視線を落とす。その先を追った伊吹は、机に書かれたたくさんの文字に気づいた。

「なにこれ・・・。朋尋、ここで何をしているの」
「机上文通っていうのかな・・・。返事が来るんだ。書き込むと、きちんと」

それは、机の上に書かれた手紙だった。朋尋と誰かが、ここで机を使い会話を交わしているのだ。