花は流れて 神末家綺談4
朋尋が書庫の整理中に本を見つけ、そこに宿る少女の魂に触れたことで繋がりが生まれた。少女は死んだ弟と朋尋を重ね、机上文通を始める。
「・・・それなら、このお姉さんも、亡くなっていることになるんだね」
「そういうことになるな」
「貸し出しカードの名前、何て書いてあるのかな」
「・・・殆ど消えていて読めない。雨にぬれたままになっていたのかな」
お姉さんはどうしたのかな、と伊吹が呟く。
「弟が死んで、お姉さんはどうなっちゃったのかな。本を抱きしめて、泣いていた」
伊吹の言葉を聞き、瑞は本を彼に差し出す。もう一度、本に宿る記憶を読み取れば、それで何かわかるかもしれない。
「伊吹、本に触れて」
「・・・また、怖いものを見るかもしれないよ」
「今度は俺も一緒だから心配ない」
伊吹に触れれば、瑞にも彼と同じ過去を視ることができるはずだ。血の契約のなせる技である。
「朋尋を取り返そう」
手を繋ぐ。強く。どんな事実が待っていても、決して屈しまいとするかのように。
作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白