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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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「朋尋は死なない。俺と一緒に連れて帰ろう」
「・・・うん、」
「でも焦ってもだめだ。あいつがどこに行ったのか見当つけないとな。何があったのか、話せるか」

伊吹は頷くと、手にしていた本を瑞に渡した。暗がりによく見えないが、ずいぶん古そうだ。

「これが朋尋の部屋にあって・・・」

伊吹が語り始める。金物屋のベンチに腰掛け、街灯の下で瑞は本を開きながらそれを聞く。
古い蔵書印。古臭いフォント。かびの匂いと死の匂いがこびりついている。

「おまえが体験したのは、過去視とかいうものだろう」
「過去視・・・って何?」
「この本にまつわる死の記憶を読み取り、過去の誰かの体験を、自分のことのように体験したのだろうってこと」

歴代のお役目の中にも、そのような能力を持つ主が複数いた。物質、生き物、空間に残された記憶を読み取る力だ。伊吹にはそれが備わっているらしい。それもおそらく、今回の「彼女」のように、強い思いを残している死者の残滓を読み取ることに突出している力だ。

「この本がヒントになる」

瑞は言いながら本を開いてみせる。

「この本は寄贈されたものだ。見えるか?」
「きぞう、って?」
「閉鎖される図書館とか、企業とか、本をいっぱい持ってるヒトなんかが、学校の子どもたちに読ませてあげてねってプレゼントしてくれるんだ。この本はそうやって、どこか遠い場所からおまえたちの学校に来たのだろう。死の記憶と、それにまつわる少女を連れて」

おそらく、そのまま書庫で眠っていたのだ。

「じゃあ・・・あの女のヒトは学校で死んだとか、そういう幽霊じゃなくて・・・」
「そう。この本に思念が焼きついているのだろう」

由縁のある土地に縛られた地縛霊のように、図書室や学校に関わる場所で死んだ者ではない。この本に強い思いを残して死んだ者だと予想できる。

「朋尋が・・・この本をあの書庫で見つけた?そこから繋がりが生まれたの?」
「おまえの話を信じると、そういうことになる。机上文通じゃなく、この本が始まりだったんだ」