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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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「瑞、どうしよう。あの子は死んじゃったんだよ、土砂にのまれたんだ。女の人は、死んだ弟を待ってる。朋尋が行っちゃった、どうしよう、朋尋が」
「伊吹?」
「どうしよう、俺どうしたらいい?」

パニック状態だ。涙声と、脈絡のない言葉。しがみついてくる手もがくがくと震えている。何があったというのだろう。しかし今は伊吹を落ち着けなければ。

「落ち着け伊吹。大丈夫だから」
「あんな、目の前で、どうして!朋尋は弟じゃないのに!朋尋も死んじゃうの?嫌だよ!」
「伊吹」

泣きわめく伊吹を抱き寄せると、背中を優しく叩いてやる。かわいそうなくらいにしゃくりあげている。いつだったか、野犬に追いかけられて傷だらけになっていた小さな伊吹を助けたときを思い出す。

あの頃よりはずいぶん大きくなっているのだが、こんなふうにむせび泣く姿を見ると、まだ幼く加護が必要なのだと思わされる。どれだけ強大な力を与えられていても、いまここにいる伊吹は子どもなのだ。

「ゆっくり息をして。吸って、吐く。ゆっくり」

嗚咽をあげている苦しそうな呼吸が、腕の中で少しずつ静かになっていく。やがて穏やかな呼吸が戻り、伊吹の身体から力が抜けていくのがわかった。緊張がとけて、かたさも徐々に取れていく。

「・・・・・・」

たっぷり五分はそうしていただろう。伊吹がゆっくり顔をあげた。

「・・・ごめん、落ち着いた・・・」

暗がりに見るその表情は、先ほどとは違い冷静さを幾分取り返している。