花は流れて 神末家綺談4
姉弟
瑞が家に戻ったとき、時刻はすでに夕方の七時を過ぎていた。空を仰げば、夕闇がそろそろ紺碧に変わろうとしている。
佐里に用事を済ませた件を伝え、病院で受け取った薬を渡す。
「お大事にってさ。血圧は安定してるけど、薬はちゃんと飲むようにって」
「どうもありがとうね。暑かったでしょう」
「平気だよ。さすがに夜は涼しくなったね」
さて、伊吹は朋尋のところへ行っているだろう。すぐに合流しなければ。
「少し出てくる。伊吹と一緒に戻るから」
「そう。気をつけて」
「ご飯、先食べててネ」
佐里にそう言い残し、石段を降りる。穂積がいれば、何かと相談もできるのだが、あいにく来週まで帰らない。事態をみるに緊迫している様子だし、朋尋の疲労を考えれば早めに解決しなくてはならないだろう。
「いてっ!」
金物屋の角を曲がろうとしたとき、衝撃があった。誰かとぶつかったのだ。
「・・・伊吹?」
腕の中にいたのは伊吹だった。
「・・・瑞、」
「何してる、朋尋はどうした?」
作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白