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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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「あ・・・あ、あ・・そんな・・・どうしよう・・・・」

一瞬の出来事だった。目の前になだれ込んできた土砂と木々の残骸、鉄砲水に飲まれた少年。伊吹は立ち上がることすら叶わない。

(そんな・・・あの子、誰か・・・!)

向こう側から、誰かが駆けて来るのが見える。合羽を着た大人達と、セーラー服を着た少女。何かを叫んでいるが、音は一切聞こえない。少女が倒れた自転車を見て悲鳴を上げたようだった。落ちている本を抱きかかえ、何かを叫び続けている。大人達は慌しく河を覗いたり、何かを指示している。騒然とした風景。

「もしかして・・・この・・・人が、」

セーラー服の少女が雨に濡れて慟哭している。胸に抱えているのは、朋尋の部屋にあった、あの本・・・。

いや、いや、いやだ!
帰ってきて、お願い、お願い、お願いお願い!
誰かあの子を助けて、あの子を!!あの子を!!わたしの弟を!!!

脳に直接響く悲壮な叫びに目を閉じる。頭がひどく痛む。その直後、伊吹は闇の中で強烈な墜落感に襲われる。

「はっ・・・」

気がつくと、朋尋の部屋だった。本が床に落ちている。

「今のは・・・なんだ?」

夢?いや、夢じゃない。本を手に取る。本に宿っていた、記憶?

「・・・朋尋、」

本を手にして、伊吹は部屋を飛び出した。





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