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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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(・・・ここはどこだ」

気がつくと伊吹は、セピア色の景色に立っていた。色がない。ここはどこだろう。夢だろうか。見たこともない場所だった。山の中を走る国道?雨の降るコンクリートの道に、伊吹は一人で立っていた。

(・・・夢なのか?)

夢というにはリアルだ。自分はいま、朋尋の部屋にいたはずなのに。色がない、音がない世界。雨が激しく降っている。道から見下ろす河は増水していて、山際からも水が滝のように流れていた。

(・・・誰か、来る)

道の向こうから、自転車が向かってきている。合羽を着ている小柄な人影。

(男の子だ・・・)

伊吹と同じくらいだろうか。小さな身体はびしょぬれだ。もうすぐ伊吹とすれ違うというその直前、大地が揺らいだ。地震か、と思う間もなく伊吹の身体は激しい揺れに地面に投げ出された。

「あ、危ない!」

少年もまた自転車から投げ出された。ひっくり返った自転車のかごから布製の手提げが落ち、その中から本が・・・。

助けなくちゃ、と伊吹が立ち上がったとき、一瞬でそれは起きた。

「!!」

激しい揺れが再び襲ったかと思うと、山際からとてつもない衝撃がやってきた。それは木々をなぎ倒し、倒れていた少年を伊吹の目の前で飲み込み、ガードレールを突き破って河へとなだれていく。

土砂崩れだった。