花は流れて 神末家綺談4
(すごく・・・古い本。あいつ読書なんてしないくせに・・・この本が、耳鳴りの原因?)
表紙をめくると、難しい漢字のスタンプが押されている。寄贈・・・?裏表紙をめくると、そこには見慣れたものがある。
「・・・貸し出しカードだ」
小さなポケットが貼り付けられており、そこにカードが入っている。伊吹らも学校で、このカードを利用して本を借りる。図書室の本にはすべて貸し出しカードが付属されており、その本を借りるものの名前や貸し出した日付などを記入し、カードを抜き取って図書室に保管するのだ。誰が何の本を借りているのか、管理するのに役立つというわけだ。
「・・・朋尋じゃない、」
伊吹らの小学校の印もないし、貸し出しカードに書かれているのは朋尋の名前ではなかった。朋尋は一体どこでこの本を・・・。
(・・・かすれて読みにくい、)
貸し出しカードに書かれているのはただ一人だけの名前だった。
――その名前に指先で触れたとき。
「!!」
ぐん、と指先が引っ張られる感覚が走ったかと思うと、世界が反転した。あっと思う間もなく、伊吹は闇に落ちていく。
作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白