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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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「弟が死んでしまって・・・ずっと帰ってくるのを待っているんだって。今も、一人で」

朋尋の声が遠い。音の発信源を探そうとするが、空間まで歪んで見える。何だこれは。朋尋の言葉に、何かが反応している。

(あれ、だ!)

彼の机の上に、朋尋には似つかわしくないものがのっており、伊吹は視線をそらせなくなる。何だろう、おかしな違和感。

「だから、俺行ってあげなくちゃ・・・」
「・・・だめ!」

朋尋が立ち上がる。耳鳴りがひどくなる。立っていられない伊吹など目に入っていないかのように。

「だめだよ朋尋・・・!行くなってば!」

耳鳴りがひどくなる。床にうずくまり、必死に耐える。朋尋がふらふらと部屋を出て行くのを、伊吹は止めることができなかった。

「っ・・・!」

どれくらい時間が経っただろう。音が消え、空間の歪みが徐々に和らいでいった。

「朋尋・・・」

起き上がり、机の上のそれを手に取る。それは本だった。分厚くて、古い。表紙にカバーはなく、ざらりとした緑の布張りだ。タイトルもない。中身を見ると、かび臭く、小さな文字がびっしりと並んでいた。