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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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軽口をきいて笑っている朋尋だが、その胸中は複雑なものだろう。好意を抱いていた相手、その文通相手が死者だということ。これ以上深入りしてはいけないと思いつつも、気持ちを抑えられないでいるのだと伊吹は思う。

「・・・まだ、あの女の人に会いたい?」

昨夜の見た机上文通の内容。会えたらいいのに、と朋尋は伝えていた。二人の間の詳しいやりとりが消えたいま、彼らの間にどのような変化や想いがあったのかは伊吹にはわからない。だけど寂しそうに笑う親友の表情を見れば、その叶わない思いに胸が痛んだ。

「会いたい。会ったら、俺はあのひとを助けてあげたいんだ」
「・・・朋尋、言ってたよね。その女の人、寂しくて悲しくて、とてもつらい思いしてるって。何があったの、そのひとに」

ちりん、とおじいの部屋の風鈴の音が聞こえる。

「・・・一人ぼっちで待っているんだってさ」

朋尋の言葉が静かに響く。それと同時に、伊吹の耳に何か別の音が聞こえてきた。

(・・・なに、これ)

違う。部屋から発生している音は、耳ではなく脳に直接響いてくる。きん、きん、きん、と小さく震える空気の音に似ている。

「誰を、待ってるの?」
「・・・死んだ弟」

きん、と音が突如大きくなり、伊吹は思わず両耳を閉じた。

(イタイ・・・!なんだ、これ・・・!朋尋には聞こえないのか・・・?)

朋尋の表情を見た伊吹は愕然とする。その目は虚ろで、先ほどとは別人のように無表情だった。