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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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夕方になってもまだ、なまぬるい残暑を感じる。朝顔が枯れても、夏の名残はなかなか消えないようだ。学校から戻った伊吹は、ランドセルを背負ったまま朋尋の家を目指していた。
神社へ向かう石段の手前にある金物屋を曲り、小道に入る。朋尋の家はその先にあった。大きな日本家屋で朋尋は、両親と保育園に通う妹、そして愉快な祖父と暮らしている。

(・・・おじさんやおばさんはまだ仕事行ってるし・・・おじいは、畑かな)

伊吹は庭から朋尋の部屋の下に回った。勝って知ったる佐倉家だ。夜にこっそりゲームをしたり喋ったりするときに使う方法で、朋尋を呼び出してみることにする。

伊吹は庭に落ちている小石を手にして、青いカーテンの窓に向かって投げてみる。こつん、と小さな音がして、石が落ちてくる。

「ト・モ・ヒ・ロー」

小声で呼ぶと、ほどなくして窓が開いた。

「何してるんだよ伊吹。オカエリー」

窓から顔を出した親友の顔には笑みが浮かんでいるが、憔悴は隠せていない。おそらく昨晩もろくに眠ってないのだろう。

「入ってきて大丈夫だよ」

朋尋に言われ、伊吹は玄関から朋尋の部屋に向かう。彼はベッドに寝そべっていた。伊吹の姿を認めて起き上がり、笑ってみせる。

「大人しくしてたよ、今日は。おまえに言われたとおりに」
「・・・そう、」
「お見舞い来てくれたのか」
「そういうわけじゃ・・・ないんだけど、」
「なんだよ、元気ないな。ゲームでもする?」