花は流れて 神末家綺談4
・・・キュッ、
返事を書き終えたのだろうか、ほどなくして靴はきびすを返し出口へと向かう。
(も・・・無理っ・・・!)
息が苦しい。苦しさのあまり声を出そうとした伊吹だが、抑えていた両手の上を、瑞の手におさえつけられそれも叶わない。
「・・・ぶっはあ!!」
足音が完全に聞こえなくなってからようやく、瑞の手から開放された。酸欠で涙がにじみ、頭がくらくらする。そんな伊吹にお構いなしに、瑞が机の上を確かめている。
「消えてるぞ、今までのやりとりが全部」
「うそだ・・・!」
瑞の言葉に慌てて机にかじりつく。ない。さっきまであったはずの、あのメッセージのやりとりが消えている。消した?そんな時間なかった。彼女は返事を書いて去っただけだ。
「返事だ。これだけが、残ってる」
瑞の指した机の左端に、見覚えのある筆跡が見えた。
<朋尋くんに会いたいです。あの場所で待ってます。ずっと>
あの場所で、ずっと・・・?
「・・・これ、何?どういう意味?」
「互いの想いが通じ合ったということだな。完全に、死者と生者の間の境界が溶け出してしまった。繋がってしまった」
そんな、と伊吹は青ざめる。
「あの女の人、なんなの?どうして学校にいるの?朋尋に会って、どうするつもりなんだ?」
作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白