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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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「・・・どうしよう、先生かな」
「――違う、」

そう言い切った瑞が、伊吹の腕を引っ張った。

「なに、」
「隠れろ」
「え」

長机の下に押し込まれる。隣の瑞が、伊吹の頭をぐっと上から押さえつけた。

「感づかれるとやっかいだ。絶対声は出すな。できれば息も」
「な、なんで?」
「彼女が来てる。返事を書かせれば、目的が分かる。来たぞ」

早口で瑞が言い終えると同時に、司書室の扉が静かに開く音がした。

彼女?来ている?朋尋の文通相手が?

死んでいるひとが?

「・・・!!」

伊吹は両手で口を押さえた。こちらへ向かってくる足が見えた。白っぽい運動靴と靴下、足首近くまである長い紺色のプリーツスカート。暗闇の中に、それだけがいやにぼんやりと浮かび上がって見える。

キュッ、キュッ・・・

靴底のゴムが床にこすれて鳴る。伊吹らの目の前で、足はとまった。沈黙。耳が痛いくらいの。「彼女」は読んでいるのだろう、朋尋からの手紙を。

(心臓の音が聞こえそうだ・・・)

必死で息を詰める。背筋がぞくぞくするのは、目の前の足の持ち主が生きていないと、もう伊吹にもはっきりとわかるからだ。

机の上に、かりかりという乾いた音が走る。返事を書いている・・・。伊吹の緊張はピークに達しようとしていた。