花は流れて 神末家綺談4
「この机だよ」
薄闇の中、その長机へと向かう。二つの筆跡を指先でなぞる瑞。この暗がりの中、電気もつけずに半分開いた瞳で文字を追っている。
「他愛もないやりとりばかりだな・・・それでも、互いを知るには十分なやりとりだと思う」
「一番最近のやりとりはどうなってる?朋尋の様子がおかしいのはここ一週間くらいだから、そのあたりの内容が知りたい」
伊吹は瑞の隣から身を乗り出す。
「このあたりか・・・<会って話せればいいのにね。学校では会えないの?>って、朋尋から聞いているな」
会って話す・・・?死者と?
朋尋は放課後の図書室で一人、彼女を待っていたというのか?
「彼女はなんて返事を?」
「返事はまだない。朋尋は、このメッセージに対する返事を待っていたんだろうな。毎日、放課後この場所で」
瑞が言い終えたそのときだった。
キュッ、キュッ・・・
「!」
図書室の方からこの書庫に向けて、床を踏む足音が聞こえてきた。
作品名:花は流れて 神末家綺談4 作家名:ひなた眞白