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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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花は流れて 神末家綺談4

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恋文



日の暮れた夕闇の中を、自転車が疾走する。

「あのばか、ほんとにもう」

伊吹を荷台にのせてママチャリを懸命にこぎながら、瑞がぶつぶつ言っている。
事情を聞いた瑞は、すぐさま学校へ行こうと言い出した。もう町へ出るバスもないので、自転車で約10キロ離れた小学校を目指しているところだった。

「すごく、へんな感じがしたんだ」

ぐんぐんスピードをあげる瑞にしがみつきながら伊吹は言う。風が髪を揺らす。

「あの文通・・・絶対よくない。朋尋、相手に肩入れしすぎてる」
「死者からの言葉に返事をしてしまって魅入られたんだろうな。寝言に返事をしてはいけないっていうのがあるけど・・・それと同じだ。交じり合ってはいけない境界が、返事をしたことで曖昧になってしまったのだろう」

山道を抜けると、坂道の下に灯りのともった町が見えてくる。星月夜に似た淡いきらめき。

「伊吹、文通の内容みたか?」
「全部は見てない。すぐに逃げてきちゃったから」
「とにかくその内容が見たい」

自転車は小学校を目指してかっとばす、ノーヘル二人乗り。そんなことに構ってはいられない。だってあの瑞が、珍しく焦っているのだ。なにかとてつもなく嫌な予感がして、伊吹の胸はざわめいた。