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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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「伊吹・・・」

悲しい。悔しい。目の前の無垢な子どもの人生を縛る、かの血に受け継がれる古い因習がうらめしい。その副産物である己自身も。

「・・・伊吹。あまり俺に、情をうつすな」
「え・・・?」

起き上がった瑞は、真正面から伊吹を見つめた。伊吹の無垢な表情が、少しずつゆがんでいく。

「・・・どういう意味?」
「俺を惜しむな。俺を望むな」

胸が痛いなんて、この俺が。
こんな厳しい言葉を伊吹にかけてしまう自分が恨めしい。だけど止められない。
これまで感じたことのない苛立ちや不安、そして戸惑い。それは、伊吹と心を交わせば交わすほどに大きくなる。

「俺の願いを、穂積は叶えてくれると言った」
「うん・・・」
「その願いが叶ったら、俺は」

その先に待つ未来は。

「俺は、死別よりもつらい別れを、おまえに強いることになる」

そう。死に別れるよりもつらいことになる。瑞はそれを知っている。それを望んでいる。だけど伊吹は知らない。いつか瑞がいなくなり、それは死別という、この世でもっともつらい別れより、もっと、もっと、悲しい結果をもたらすということを。

「瑞と・・・仲良くするなって、こと?」

伊吹の瞳が揺れている。

「・・・おまえのために言っている」
「なにそれ・・・」

伊吹の戸惑いに揺れる瞳は、みるみるうちに怒りへと変わっていく。

「なんでそんな勝手なこと言うんだよ・・・」
「伊吹・・・」

震える指先を握りこんだ拳が、瑞の肩に飛んでくる。