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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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「なんでそんなこと言うんだよ!」

泣きながら怒りをぶつけてくる伊吹を前に、瑞は戸惑うことも悲しむこともできなかった。虚無が巣食っているように、何の感情も沸いてこない。

「どんな、未来が・・・、」

震える声で伊吹が続ける。

「どんな未来が待っていたって、俺はおまえと生きるって決めてるんだ・・・っ」

その涙声に、瑞の胸の虚無が音をたてて崩れていくのが、はっきりとわかった。

「別れるときを想像して・・・死に行くときを想像して・・・そんなことを考えて誰かを愛さないのは、それは違うよ・・・」
「伊吹・・・」

面食らった。世間知らずのこんな小さな子どもの言葉とは思えなかった。
侮っていたのかもしれない、伊吹を。何も分からず、言われるがままにお役目として生きる未来を目指しているのだと思っていた。だけど伊吹は、自分なりの覚悟を決めているのかもしれない。穂積の背中を追いかけながら。

「瑞の願いを、俺は知らない・・・死別よりもつらい別れなんて想像もできない・・・だけど、それでも俺は、おまえに笑っていてほしい。そのためだったら何だってする。おまえ言ったじゃないか、真面目に答えを考えるって・・・。嬉かったのに、どうして急に、こんな・・・突き放すようなことを言うんだよッ!」

立ち上がった伊吹が、座敷を出て行こうと踵を返す。

「だめだ伊吹、一人は・・・」
「来るなッ!」

聞いたこともないくらい鋭い声に、立ち上がった瑞は金縛りにあったように動けなくなった。

「俺はまだお役目じゃない。でもいずれそうなるための血が流れている。瑞は逆らえないはずだ、俺の言葉に」

伊吹の言うとおりだった。身体が動かない。血が、逆らうことを許さないのだ。瑞の主は穂積なのに。まだ神の加護も受けていない子どもなのに。

「一人で行く。ついて来るな」

聞いたこともないくらい冷たい言葉だった。伊吹は瑞に背を向けて座敷を出て行ってしまった。