紺碧を待つ 続・神末家綺談3
「伊吹と瑞は、ここで連絡を待っていてくれ。詳しいことがわかるまで、調査は禁じるよ。先に休んでいていいからね」
伊吹を安心させるように言い、穂積は頭を撫でてくれた。
「・・・わかった」
「心配しなくていい。瑞もいてくれるからね」
準備を整えた穂積と紫暮は、タクシーで町へと降りていった。
柱時計の古めかしい音が響く座敷に、瑞は伊吹と二人で過ごしていた。テレビも本もないし、伊吹はさぞかし暇だろうと思っていたが、瑞の予想に反して、伊吹は資料を熟読している様子で暇そうには見えなかった。
(真面目なことだな)
まだほんの子どもなのに、と瑞は思う。同じような年の子らが遊んでいる間にも、伊吹はこうして役目を果たそうとしている。
(普通の家に生まれていれば・・・)
未来を考える余裕もないくらい精一杯遊んで。
誰かを好きになって恋をして。
いつか子どもをもうけて幸福な人生を過ごしていただろうに。
神の花婿。定められた運命。この幼い子どもの人生が、この先一族と村のために捧げられるのだ。
「ねえ瑞」
「・・・なに」
瑞の思考を遮ったのは、伊吹の声。
「瑞は、知ってるの?神末のお役目の花嫁を」
作品名:紺碧を待つ 続・神末家綺談3 作家名:ひなた眞白