紺碧を待つ 続・神末家綺談3
「神様を信仰していた・・・ということは、見返りがあるはずだ。うちとは規模が違うかもしれないけど・・・五穀豊穣であるとか、商売繁盛であるとか」
「そうだな。どんな神様かは知らンがね。旅館を経営していたのなら、商売に関わることかもしれない。だが、神様から加護を得るためには、必要なことがあるよな」
「神末の一族が、婿をさし出して力を得ているのと同じ理屈だ」
そう、何かを捧げていたはずだ。
祭り?収穫物?山の生き物の命?
「だがいまや、信仰はもうない。朽ち果てた祠がそれを物語っている。祀るべき一族もここを出ている。信仰は失われた。さあ、ここにいた神様はどこにいるのかな」
そうか、祟っているのか。伊吹は気づく。
「祀られるはずのものが、それを放棄され祟っている・・・そういうことかもしれない」
なんとまあ、と瑞が笑う。挑戦的な、どこか怒りを含んだ笑みだった。
「お役目様の相手は、祟り神というわけか」
.
作品名:紺碧を待つ 続・神末家綺談3 作家名:ひなた眞白