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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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「穂積様は明日お戻りやさかい、あとはゆっくり過ごしたらよろしいわ。観光なんかも楽しいんちゃうやろか。京都は楽しいとこがぎょうさんありますさかいになあ。若い子らなら、四条あたりで買い物とか。夏休みやもんなあ」

観光か・・・。悪くないな、と胸がわくわくする伊吹は、瑞のことを思い出した。

「あ、瑞は・・・どこに」
「瑞なら・・・さっき池で鯉にえさやってはったけど・・・」
「あの、じゃあ失礼します」
「お疲れさんやったねえ」

満足気に笑う清香に頭を下げ、伊吹は座敷をあとにする。
瑞に会いに行かないと。まだ、謝っていない。










ぱくぱくと口を開けてえさを待つ鯉を見下ろしていたとき、伊吹が呼ぶ声が聞こえた。

「瑞っ」
「伊吹」

そういえば昨日今日とばたばたしていて、話していなかった。あの夜のわだかまりは解けていないはずなのに、息を弾ませて駆けてくる伊吹には満足そうな表情。きっと清香にほめてもらったのだろうなと、瑞は思ったのだが。

「伊吹、休んでなくていいのか」
「とっくに元気だよ俺は。それより、瑞」

遊びにいこうよ、と伊吹が笑った。突然の申し出に、瑞は思わず呆けた声を返してしまった。

「は?」
「観光でもしてきたらって、清香さんが言ってくれたんだ。まだ昼前だし行こうよ」

無邪気な物言いからは想像できない。あの夜の厳しい目をして自分を拒絶した伊吹を。

「行くって・・・」
「どこ行きたい?まだ昼前だし、おいしいもの食べてぶらぶらしようよ。おこづかい、ちょっとなら持ってきたし。瑞は何したい?何見たい?」

伊吹の真意を汲み取り、瑞はかつてないくらいに胸が締め付けられるような痛みを覚えた。

『楽しいことってなに?どんなときに嬉しい?』

いつかの夜、伊吹に尋ねられたっけ。こいつは俺を、楽しませたいんだ。笑わせたいんだ。だからわだかまりを無理にねじ伏せて、こんふうに笑ってるのか。いじらしくて、愛おしいと思う。伊吹は子どもなのに、こんなふうに気を回せるのかと、瑞はまた驚くのだった。

「そうだなあ・・・暑いし、冷たいもん食いたいな。辻利の抹茶パフェ・・・カキ氷もいいな」
「うん、うん、いいね。俺、マンゴー味!」
「いまどきの子だネ、マンゴーだなんンて」
「他には?」