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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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笑っていて



かつてあの屋敷の裏山には、神が祀られていたという。舘林家はその神を祀る事で財を成し、古来より五穀豊穣、商売繁盛の栄華を誇ってきた。
一族は何かを捧げ、その見返りを得て永く繁栄してきたのだ。

「それが、ひとの命やったんやて」

穂積の招魂の翌日。須丸邸の一室。伊吹はそこで、絢世と向かい合っていた。
昨晩の招魂で、わかったことがたくさんあるという。事件の全貌がほぼ見えたという穂積の言で、伊吹と絢世は一足先に京都に戻っていた。真相は、すでに清香に伝えられており、二人は彼女の口からそれを聞いている。

「ひとの・・・命?」
「そう。神様は自分の力を分け与える代わりに、館林家に命を要求した。そういう契約やったんやろなあ。詳しいことはわからず仕舞い。それにしても依頼人は、いくら一族の負の歴史やからって、うちに隠し事とはええ度胸やこと」

ひとの命を贄として、繁栄してきた一族。それを隠そうとするのは当然のような気もするが・・・。権力を持った一族は、命を差し出すよう領民らに強制したのだろう。しかし時代とともに、その人道にもとる行いの残酷さが明るみとなってゆき、これは衰退したのだと考えられる。

「それって・・・ずっと昔から、ですか?」
「そうらしいなあ。旅館を始めたころにはもう、信仰もなかった。明治初期には新しい時代の中の悪習やとされて、一族の目も覚めたんやろなあ。せやけど隠す必要はあったみたい。なんせ捧げられた命は・・・・・・あの廊下に立ち入った伊吹はんならわかるか・・・百や二百ではすまへんさかいにな」

伊吹は頷く。あの廊下で感じた無数の虚ろな視線を思い出す。

「神様に捧げられたひとたちが殺されたのが・・・いま廊下のあるあの場所だったのだろうと、お役目様は仰っていました。そして伊吹さんの持ち帰った短刀こそが、ひとびとの首をはねたのだろうって」

絢世の言葉に、伊吹はあそこで伊吹を導いた女性を思い出す。彼女もあの場所で、首をはねられたのだろう。