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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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深夜二時が近づく。神隠しの廊下では、穂積による招魂の儀が執り行われようとしていた。
廊下の中央に、祭壇が設けられている。蝋燭の火がゆらめき、そこに座る穂積をぼんやりと浮かび上がらせていた。

(お役目の招魂を見るのは初めてだな)

廊下の内側、至るところに護符を貼って回っていた紫暮は、祭壇に鎮座する穂積を見て思う。白い装束に身を包んだ穂積は、目を閉じてじっと動かない。彼の向かいには、粗末な座布団が一枚置かれている。

あれが魂の座。穂積の呼び出した魂の返る場所。

(なんという空気だろう)

張り詰めて、皮膚が痛いくらいなのに、穂積の周りだけはそれがない。いつも通り、彼の人柄と同じ、あっけらかんと渇いた、穏やかな空気。これが大掛かりな儀式を前にした術者の姿だろうか。祖母の清香でさえ、こんなときは張り詰めていて、近寄れば氷のような冷たさで傷がつきそうなほどなのに。

これが神末のお役目なのか。紫暮はその柔らかな空気とは裏腹に、鳥肌がたつのを感じていた。

「二時になるぞ」

そばに立つ瑞が言った。相変わらずのやる気のない声だが、いつもより深刻な声色だった。

「陰の気が最も高まるとされている時間だ。こんな時間じゃないと呼び出せないというから仕方ないが、それだけ床下からの抵抗は猛烈だろう。穂積を守れよ紫暮」
「言われなくても。それが俺の仕事だ」

流れは単純だ。魂から情報を得、即座に廊下を脱出する。床下の相手が祟り神である可能性を考えれば、下手に祓うわけにはいかない。危険が伴うからだ。第一の目的は、ここで死んだ女性に話を聞くことにある。