紺碧を待つ 続・神末家綺談3
駆けつけてくれたというのか。赤面する彼女から思わず目を逸らす。胸がどきどきするのをとめられない。
「あ、あの、じいちゃんたちは・・・」
「お役目様が、今夜あの廊下で招魂をされます。いまはそのご準備に。伊吹さんが呼び出したという女性に、もう一度話しを聴くのだとおっしゃっていました。瑞さんが同席されるそうです」
「・・・俺の術は半端だったから、あの女のヒトにしゃべらせることが出来なかったんだ。瑞がいれば、死者の言葉も聞けると思う」
布団から半身を起こす。
「じいちゃんが招魂するとはいえ、床下から猛烈な抵抗があると思う。手伝いにいかないと」
「紫暮さんがいますから、ゆっくり休んでいてくださいとのことです」
そうか、と肩から力が抜ける。優秀なものが揃っているではないか。自分の出番などないのも当然だ。
「・・・あの短刀、」
水差しを伊吹に手渡しながら、絢世が言う。
「え?」
「伊吹さんが女性から託されたという短刀。あれは、たくさんの人間の血を吸っているのだと、瑞さんが仰っていました」
血・・・。
あれが一体何なのか。あの廊下で何が起きたのか。床下には何が潜んでいるのか。
それが今夜明らかになるだろう。
作品名:紺碧を待つ 続・神末家綺談3 作家名:ひなた眞白