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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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「・・・今でも誰か通ってるのかな?」
「いや、人間じゃない。足跡もないし、草の踏みしめ方が違う。イノシシだろう」
「草ボーボーだね・・・」
「行ってみるか」

木々の隙間を縫うように進む。雑木林の中は、日差しも途切れてひんやりとしている。

「・・・セミの声がしない」

瑞の呟きに、伊吹も違和感を覚えた。雑木林に踏み入ってから、一斉にセミが鳴きやんだのだ。不気味だ。まるで誰かに監視されているようなタイミング。

「気にしなくていい。俺がいるから大丈夫」

その言葉が、伊吹に両足を動かす勇気をもたらす。瑞は歩調を緩め、伊吹が追いつくのを待ってくれた。

(・・・そういえば、昨日の答えを聞いてない)

昨夜のやり取りを思い出す。結局あれから有耶無耶になって寝てしまった。

(瑞は、どんなとき嬉しい?楽しい?俺はそれを、叶えてやりたい・・・)

何も語らない背中をじっと見つめる。

(いつも、どんなこと考えてる?本音なんて絶対言ってない。永い時間の中を、どんなふうに過ごしてきたんだ?じいちゃんが叶えてくれるって言う、おまえの望みは何?俺に何が出来る?おまえのために何かしたいんだ。主従関係なんて嫌なんだよ)

声に出したいたくさんの思いを心の中でぶつけてみても、むなしいだけだった。そんなこと、言えるわけない。聞けるわけない。絶対答えてもらえない。

「どうした?」

立ち止まった伊吹をいぶかしみ、瑞が振り返った。

「・・・あ、何も、ないよ」

どんなに近くにいても、瑞は遠い存在だ。
眠れぬ夜の苦悩など。
たくさんの命を見送り、一人ぼっちで行き続ける孤独など。
伊吹には絶対わからないのだから。

「・・・言ってよ、気になるから」
「えっ?」