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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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信仰喪失



水の枯れた広大な池には、砕けた灯篭の残骸や石ころが散らばり、夏草に覆われひどい有様だった。

「ひどいな・・・荒れ放題だ」
「神隠しを恐れ、誰も近づかンのだろう。当主でさえ、ああだったからな」

瑞とともに屋敷の周辺調査にやってきた伊吹は、広大な敷地を歩きながら、ここにはもう生きた人間のために存在するものが何一つないことを知った。ここはもうひとに見捨てられている。山も、川も、石灯籠も、過去に存在しているかのように悲しく映った。

「外から見ても、何か威圧感があるな」

二つの屋敷を繋ぐ廊下は、外側から見ても異様だった。ぴたりと閉じられた雨戸。黒ずんだ長い廊下が二つの建物を繋ぐ様は、まるで地を這う蛇のようだ。

「依頼人からもらった資料には、戦争が終わってすぐの頃、床下を掘ってみたことがあるって書いてあったね」
「何も出なかった、ともな。遺体も何も」

あの虚ろな何百という視線は、すべて床下から向けられていたのに・・・。

「ここから裏山へ通じているようだな」

雑木林の脇に、小さく獣道が見えた。