紺碧を待つ 続・神末家綺談3
「血なまぐさい・・・」
抱き上げた伊吹に外傷はないようだが、血の匂いをまとっていた。廊下へ立ち入ったであろう伊吹は、何と対峙したのだろう。
(驚いた・・・無傷で帰ってくるなんて)
神隠しの廊下。決して一人で調査はいけないと、あの穂積が命じたくらいなのだ。かなりの危険が伴うはずだし、瑞もその気配は感じていた。伊吹はそれらを跳ね除け、ここに生還している。
(・・・不甲斐ないな、俺は)
主に不要と命じられ、その主は瑞の助けなしで危険な場所から帰ってきた。伊吹の底知れぬ可能性に驚嘆するとともに、己の役立たずっぷりに嫌気が差す瑞だった。
作品名:紺碧を待つ 続・神末家綺談3 作家名:ひなた眞白