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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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惑いと力と



廊下の入り口である大きな扉の前で倒れていた伊吹を見つけたとき、瑞は冗談ではなく息が止まるかと思った。退魔法を使った伊吹の気配を探し、ようやく重い腰をあげ、そして通りかかったここで伊吹を見つけた。うつぶせたままだが、かすかな呼吸音が聞こえて安堵する。無事だ、生きている・・・。

「伊吹、」

手を触れるでもなく、駆け寄るでもなく、瑞は彼のそばに立って伊吹を見下ろした。この先こいつと、どうやって付き合っていけばいいのだろう。主従としての関係を伊吹は絶対に受け入れようとしないだろう。かと言って心を許せば、いつかくる未来で伊吹を深く傷つけることになる。

(でも、俺が迷ったところでおまえの答えは決まっているのだろう)

ともに生きると決めたのだと、そう伊吹は言った。どんな未来が待っていようとも、と。

(結局のところ、怖がっているのはこの俺なのだ)

傷つく伊吹を見るのが、怖いのだ。泣きすがり、苦しむ伊吹を見るのが怖いのだ。
覚悟を決めなければいけないのは、伊吹ではなく自分だ。

「ん・・・」
「伊吹、」

伊吹が呻き、咄嗟に駆け寄る。顔色は悪くない。呼吸も安定しており、心配はなさそうだった。消耗しているだけらしい。抱き上げようとすると、彼の手から何かが音をたてて床に落ちる。

「・・・なんだ、これ」

短刀、だろうか。鞘はないが、随分豪奢な細工がしてある。錆びており、刃はくすんでいる。触れるのをためらうような、そんな異様な気配をまとっていた。後から伊吹に話を聞かなくては。