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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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目の前に降り立った気配に目を開き、伊吹は静かに語りかけた。

「だから俺に話して。あなたをここに閉じ込めたものは、なに?」

女性だ。伊吹の前に座っている。結い上げた髪、粗末な着物。頬はこけ、虚ろな瞳はじっと床を見つめている。帰ってきた魂。女性は静かに口をあけるが、声は出ないようだった。

(だめだ、俺の力じゃ、喋らせるまでは・・・無理っ・・・)

指が震えだす。組んだ指が猛烈な力で引きちぎられそうになる。印がとければ魂は再びあちらにかえってしまう。

「くっ・・・!」

女性の虚ろな瞳に、感情が宿る。恐怖だ。見開かれた両目。顔を覆い、ぶるぶる震えだした彼女の口が、動いた。

――来る、と。

「っ!!」

その瞬間、弾けるように印が解け、女性の姿は消えた。血の匂いと禍々しい気配。世界が一変する。伊吹は立ち上がり、印を結び直す。あいつが戻ってきたのだ。伊吹は先ほどよりも冷静な頭で思った。

「臨、」

一言一言に、力を込める。水音は、伊吹を見つけて近づいてくる。とぷん、とぷん。

「兵、」

一言ごとに印を変える。恐怖と緊張に負けないように、かみ締めるように唱える。今度は力を削いでやる。声に宿る力を、ありったけ集中してぶつけてやる。

「闘、者、皆、陣、烈、前、行!」

危険を感じてか、近づく気配が鋭さを増す。伊吹は声を張り上げた。

「こちらに近づくことは許さない!急急如律令!」

剣印を思い切り払う。水音と、呻くような気味の悪い音が響き渡った。今なら閉ざされた扉が開く。