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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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(見ている・・・さっきの女のヒトの気配もする・・・)

あの視線だ。何十、何百という虚ろな視線が、伊吹に集中している。床下から。いまならわかる。ここに捕われ、死んでいったひとたち。助けを乞うて、それでも救われなかったひとたちの虚無の視線。

「ここから出してあげるから。もう少し待っていて」

伊吹は床に手をついて、静かに語りかける。

「家族のところへ、帰ろう。俺に教えて。ここには一体何がいるのか」

床に額づき、すべての視線を受け止める。絶望を通り越し、からっぽになった魂たちは、それでも一寸の光にかけ、床下からの開放を望んでいる。伊吹ならば、それができる。

眼を閉じて正座をする。印を結んだ指先。すう、と息を吸い込み、細く細く口笛を吹く。穂積に習った方法を、一生懸命に脳内で再生する。

招魂。魂を呼び寄せる儀式。

花散る彼岸より、花咲く此岸へ。魂よ帰れ。いまひとたび帰れ。

彼岸へと響く口笛の音。闇をゆるゆると泳ぐ音は、漂う視線の間を縫い、静かにこちらへ引き寄せていく。じっとりと背中に汗が滲むのがわかる。二つの手で組んだ印が、見えない力によって引き離されそうになる。魂が抵抗している。こちらに戻ることを恐れている。

「・・・大丈夫、ここにはいま、怖いものはいないよ」