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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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還る魂



悔しい、腹ただしい。指先が震え、がむしゃらに動かす両足がもつれそうになる。

「うっ・・・」

泣きたくなんかないのに嗚咽がもれる。星の明かりだけが頼りの夜の屋敷を、伊吹は駆ける。

近づこうと思えば思うほど、遠ざかっていく背中。明確な拒絶。示唆される別れ。

(どうしてなんだろう・・・)

こんなに遠いのだろう。こんなに難しいのだろう、伊吹は玄関ホールまで辿り着くと、うずくまって膝を抱えた。

「・・・・、」

瑞は来ない。来るはずがない。激情に任せてそう命じたのは自分だ。主としての力を振るった。一方的で、暴力にも似た理不尽さを伴って。

(一番、したくなかったことなのに・・・)

対等でいたいと願っていたはずなのに。どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。頭のなかがぐちゃぐちゃで、冷静に考えることができない。自分の嗚咽と震えが止まるまで、伊吹はその場を動けなかった。これほどまでに打ちのめされている自分が信じられなかった。

「・・・?」

ふわりと風を感じた。誰かに呼ばれたような気がして顔を上げる。

「あ、」

暗がりの下に、誰かが立っている。輪郭がぼんやりと青白い。女だろうか。ぼんやりしてはっきり見えないが、髪を結い上げているように見える。