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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 神末家綺談3

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朝が来て、屋敷の本格的な調査が始まった。セミの大合唱とは裏腹に、屋敷の中は静まりかえっており、どこかひやりと冷たい空気が流れている。母屋は一階から上は閉鎖されており、向こう側に存在する巨大な新館も同じだった。穂積とともに見取り図を見ながら件の廊下に辿り着いた伊吹は、その異様さに戦慄した。

「・・・なにこれ」
「誰も立ち入れないよう封鎖されているのだろう」

新館と母屋を繋ぐ廊下の入り口。巨大な観音開きの木製の扉に、これもまた巨大なかんぬきがかけられている。来るものを拒むその異様さから、ここが危険な場所であることを改めて感じた。

「開けるよ」

穂積がかんぬきを外すのを手伝う。開かれた扉の向こうには、別次元が広がっていた。

「真っ暗だ・・・」

光が一切入らないのは、廊下の両側のガラス戸が、すべて雨戸で封じられているからだ。外から廊下を見たときにそれがわかったのだが、内側から見るとまるで牢屋のようだ。誰も中に入れないようにと依頼人が施した措置なのだろうが、何かを閉じ込めているような、そんな気が伊吹はした。

「寒いな」

埃と湿気の匂いが混じる空間なのに、異様にひやりとしている。ねっとりとした闇がうごめいている錯覚を覚え、伊吹は頭を振る。ここでひとが消えている。何十人も。そして誰も、帰って来ない・・・。

「あ、瑞と紫暮さんだ」

廊下の向こうから懐中電灯の光が差し込む。新館側から、瑞と紫暮が扉を開けたのだ。距離は50メートルほどか。ずいぶん長い廊下だ。二人が並んで歩けるほどの狭さ。ここで本当にひとが消えるのだろうか。消えたのならば、一体どこへ行ったというのだろう。

「伊吹、手を」

懐中電灯を灯した穂積に手を差し出され、伊吹はそれをぎゅっと握った。闇に囚われてしまわないように。