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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 神末家綺談3

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「屋敷の見取り図や建築の際の記録、これまでの神隠しの経緯などをまとめたものです。屋敷は好きに使っていただいてかまいません。台所には一週間分の食料もあります。温泉や客室も好きに使って下さい」

早口でそう告げたあと、館林はこう結んだ。

「・・・くれぐれも、廊下には気をつけて下さい」

尋常ではない彼の怯え方に、伊吹はすっかり呑まれていた。ここは恐ろしいところなのだと、改めて感じ背筋が震えた。

館林は自家用車で逃げるように去っていった。

「さて、まずは荷物を置いてこよう」

穂積はいつものペースで朗らかだ。伊吹はそれに救われる。
母屋側の大きな玄関から入って、寝室に使うよう言われている座敷にそれぞれが荷物を置く。大きくて、古めかしい屋敷だった。伊吹の家も似たようなものだが、光の入る開放的な家だ。比べてここはどうだろう。明かりを灯しても妙に暗い気がする。

「ここでじいちゃんの仕事を見るのはいいが、一つだけ約束をするよ」

優しい声で穂積は言うが、伊吹にはわかる。こういうときの穂積の言葉は、決して聞き逃したり軽んじたりしてはいけないたぐいのものだ。

「暗くなってから、一人で屋敷を歩き回ってはいけない。神隠しの廊下以外であっても、だ。必ず誰かと一緒にいること」

はい、と素直に頷くとともに、怖くなる。ここはひとが消える家。お役目であれ、その血を引くものであれ、例外ではないと穂積は言いたいのだろう。

「夜の調査は禁じる。日が昇ってから行うことにしよう。それからこの母屋だけでもいいから結界を張ろう。寝ている間、無防備になるのが怖い」

穂積の言葉に紫暮と伊吹は揃って頷く。それがいいだろう、と神妙な声で呟いたのは瑞だ。

「油断しないほうがいい」

いつになく真剣な瑞の言葉に、ここが本当に危険なのだと伊吹は思う。これは遊びじゃない。朋尋たちとする肝試しとも違う。