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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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夜のなか



「伊吹、おい伊吹っ」
「えっ」

はっと顔をあげると、朋尋が不思議そうに伊吹を見つめていた。

「どうした、ボーッとして。伊吹の番だぞ」

コントローラーを渡され、曖昧に微笑む。ずっと考え事をしていて気づかなかった。
お泊り会の夜。朋尋はマコトとテレビゲームに興じている。マコトのお父さんが空き地でバーベキューをしてくれて、お腹いっぱい肉をご馳走になった。わいわいと風呂に入り、パジャマでのんびりゲームを楽しんでいても、伊吹の心は曇ったままだ。

(・・・瑞とは結局、あれからずっと顔を合わせなかったな)

伊吹が避けていたからだ。今朝だって、行ってきますさえ言わずに出てきた。穂積は喧嘩したのかと笑っていたが、伊吹にとっては笑い事ではない。

(あいつはきっと、俺のことなんて気にしてない)

穂積だけが特別なのだと、彼は言ったから。それがいっそうやるせない。瑞のことなんか気にしなければいいのに、もやもやが晴れない。

「あーもー伊吹―」
「えっ」

気づくと、伊吹の操作していたキャラクターは、敵に踏まれてペシャンコになっていた。

「ごめん・・・」
「なんか元気ないぞ、どーしたん」
「大丈夫、元気だよ」

笑って見せるが、うまく笑えた自信がない。せっかく楽しく盛り上がっているというのに。伊吹はこっそりため息をついて、コントローラーを朋尋に渡した。

「なあなあ、ちょっと学校行ってみねえ?」

マコトが言い出した。

「学校?もう九時すぎだぞ」
「だからいいんじゃん。旧校舎の肝試しだよ」

伊吹らの小学校の敷地内に、いまは使われていない木造校舎がひっそりと建っており、不思議な噂が囁かれているのだ。二階建ての古い木造校舎。物置きとして使われ、現在児童の立ち入りは禁止されている。

「無理無理、だめだめ」

朋尋が言う。以前の彼ならノリノリだっただろうと伊吹は思う。先日の奥沢蛍事件で懲りたのだろう。伊吹同様、夜闇の深さを知って。

「何だっけ・・・確か、指さし地蔵の噂だっけ」

伊吹は思い出す。旧校舎に囁かれる怖い話、指差し地蔵。