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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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「どこ、」

瑞が唐突に口を開き、顔をあげた。

「えっ」
「俺になら気なンか遣わなくていいだろ、どこ行きたいの」

素っ気無いその言葉。だが、温度が通っているように伊吹には感じられた。嫌々かもしれない、佐里に言われたから仕方なくかもしれない。だけど、嬉しかった。

「あ、俺・・・」
「なに」
「・・・あの、花火を見に行きたい」

隣県で開催される花火大会。日本海側最大級!なんていう広告を学校の掲示板で見た。海で見る花火はどんなだろうか、いつか行ってみたいと思っていたのだが、子ども同士で県外に遊びに行くのは学校でも禁じられているし、ひとごみの中に祖母を連れて行くのも忍びなく、言い出せずにいたのだ。

「いーよ」
「い、いいの?」
「いーよ」
「・・・ありがとう、」

小さな声で礼を言う。佐里が嬉しそうに笑った。
気まぐれかもしれないし、佐里が言うから仕方なくかもしれない。本当はいやだな面倒だなって思っているかもしれない。

それでも伊吹は嬉しかった。

こうして夏の「おでかけ」が決まったのだった。