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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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「もうどれだけ、時代を流れてきたかも忘れてしまうくらい長い時間、神末家のお役目の式神として生きてきた。自分がどんな風に生まれて、どうして今こうしてここにいるのか、そんなことはとうの昔に忘れている」
「・・・平安時代くらいかな。京都に都があったっていう。瑞はそのころに生まれたの」
「覚えてない。そんな時代もあったような気がするな。俺は主に使役されるだけの存在だった。未来永劫、神末家が続く限り存在していくのだと、思っていた。穂積に出会うまでは」

穂積に出会うまで。その時間の永さを思い、伊吹は胸が冷えていくのを感じた。悠久の孤独。想像もつかない。周りの人間は老いて死に、生まれ、また死に別れ。その繰り返しを一体何度経験し、彼はいまの時代に存在しているのか。

「・・・瑞は、じいちゃんのことを特別だって言ったよね」
「言ったね」
「今まで、たくさんのお役目様のそばにいたのに、どうしてじいちゃんだけが特別なの」

歴代のお役目の式神として存在し続けた彼にとって、穂積はどのような存在なのだろう。

「あいつが特別なのは、俺の願いを叶えてくれる、唯一のお役目だからだ」

願い?

「約束してくれたんだ、穂積は。俺の願いを叶えてくれると。歴代のどのお役目も果たせなかった願いの成就を」

その願いとは何だろう。途方もない年月を流れ続けてきた瑞のたった一つの願いを叶えてくれる、たった一人の人。

まだ伊吹には聞けない。瑞のすべてを知ることはできない。今はただ、手の届く距離で、心をほんの少しだけを重ねられるだけでいい。

――だけどいつかは。

(・・・瑞の願いを、俺がいつか知る日は来るのかな)

そのために。
この式神のそばにいるために。不器用な優しさを感じるために。
自分にできることは何だろう。