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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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願い花火



空が、徐々に菫色に染まっていく。西の空に一つ星が輝いている。砂浜には族連れ、浴衣姿のカップル、中高生、老夫婦。年に一度の大イベントを前にして、打ちあがる花火を心待ちにする人で溢れ返っていた。

「・・・・・・」

伊吹は、瑞と二人で砂浜に座っていた。ざわめきの合間に聞こえてくる潮騒。空と同化していく水面が静かに揺れる様を見ていると、期待に弾んでいた心が心地よく静まっていくのを感じる。

「あの~よかったらご一緒しませんか~」

ふいに声をかけられる。浴衣姿の若い少女二人組みが、瑞に熱い視線を送っている。これは「なんぱ」ってやつだ!とドキドキしている伊吹とは対照的に、瑞はつまらなさそうな表情を浮かべている。
瑞の中身はなんであれ、外見はそれなりに身なりのいい整った顔立ちの青年なので、若い女の子は騙されるのだろう。罪深い彼は、ハエを追い払うような仕草で少女らに手を振る。

「連れがいるから」
「や~かわいい~弟さんですか~?」
「息子」
「・・・・・・」

女の子たちの笑顔が凍りつく。とぼとぼと背中を向けて去る二人を見送り、伊吹は口を尖らせた。

「息子って・・・せめて弟でいいじゃん」
「孫、のほうが近いがね」
「孫・・・」
「俺はさ、もう何千年と存在し続けているンだぞ」

潮騒に混じり、瑞の静かな声が聞こえてくる。