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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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若草色の和服に帽子。外出するようだ。

「じいちゃんどこか行くの」
「京都だよ」
京都と聴き、寝転がってテレビを観ていた瑞が顔だけで振り返る。
「清香(きよか)のところか。怖い怖い」
「夜には戻る。遅くなるけどね。みやげを買って来るよ」

清香、というのは須丸(すまる)家の当主のことだ、と伊吹は思い出す。
神末家と須丸家は、明治維新まで一つの一族だったという。それが明治の御一新を機に二つに分かれたのだとか。

「行ってらっしゃい」
「いってきます。宿題頑張りなさい」

穂積を玄関で見送って居間に戻った伊吹は、瑞に尋ねた。

「・・・瑞は清香さんをよく知っているのか?」

芸能ニュースに視線を向けたまま、瑞は笑う。

「まあ、おまえよりは知ってるよ」

須丸家は神末と同じく、土御門の力を与えられた一族だ。代々陰陽師を輩出する血統で、強力な力を持っている。当主の清香はその筆頭である。政界とも深い繋がりがあり、日本史を裏側から操ってきた、と言っても大袈裟ではないと瑞は言う。

「清香は俺のこと大嫌いなンだよな」

幼い頃、伊吹も一度清香に会ったことがある。柔和なおばあさんで、美しい京都弁を操る人だった。

「須丸家は、神末のバックアップを請け負う一族だ。お役目のサポートだな」
「詳しいことは・・・俺わかんない・・・」
「清香は孫がたくさんいてな。いずれ須丸を告ぐ子ども達だ。いつかおまえと会うこともあるだろう」

それきり瑞はテレビに戻ってしまった。
家のこと、家にまつわるひとたちのこと。自分にまつわる未来のこと。
伊吹はそれらを深く考えたことはなかった。いつか知るときがくるだろうと、のんきに構えていた。