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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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距離


扇風機の風で、ぱらぱらとめくれるプリントを抑える。縁側から響いてくるセミの声に集中力を持っていかれ、伊吹は畳みに寝転がった。
夏休みのお約束といえば、この大量の宿題だ。まだ夏休みの初期だから焦る必要などないのだが、楽しい夏休みを満喫するため、早めに片付けておいて損はないはずだ。

「おーおーやってるね小学生」

居間に入ってきたのは瑞だ。アイスを片手に寝そべると、テレビのリモコンを手にした。
彼の見た目は高校生だが、学校には行ってない。学校どころか、たぶん中身は妖怪か、化け物か、とにかく普通の人間じゃないのだと、伊吹は最近ようやく知った。年若い外見とは裏腹に、その中には老獪で達観した奇妙な人格が宿っているのだ。
ミルクティー色をした柔らか髪。今日は真っ赤なTシャツにジーンズといういでだちで、堕落した夏休みを送るチョイ悪高校生といった感じだ。

「このくそ暑い朝からご苦労さンだこと」
「午後から朋尋たちと学校のプールに行くんだ。それまでに今日のぶん片付けないと」

村からバスで三十分。伊吹の通う小学校のプールは夏の間解放される。そこで遊ぶ夢のような楽しい時間を思い、伊吹は再びプリントに向き直る。

「なになに?」
「ちょっと、プリントにアイス落ちる!」
「太郎くんが時速10キロで4キロ先の駄菓子屋へでかけました。お兄ちゃんは20分遅れて時速20キロの自転車で出発しました・・・ねえ。二人同時にいきゃいいのにややこしいネ」
「邪魔するなってば、もうっ」
「はーいどーもすいませンでしたー」

心のこもっていない謝罪にむっとしていると、穂積がやってきた。