夜のゆびさき 神末家綺談2
懐中電灯で中を照らしながら進むと、古びた本棚と書籍の並ぶ一角に入った。
「いた!朋尋!」
懐中電灯の光の先に、朋尋が横たわっているのが見えた。その隣には、マコトもいる。
「んん、伊吹・・・?」
「よかったあ・・・怪我してない?」
「平気だけど・・・俺、何してたんだっけ?」
寝ぼけたような朋尋の声を聞き、肩の力がふーっと抜けていくのがわかった。膝がかくんと抜けて、伊吹はその場にヘナヘナと座り込む。マコトは幸せそうな顔をして寝息をたてている。
「あ、男の子は・・・・・」
あの少年は消えていた。ここまで伊吹を導いてくれた彼は一体・・・。
「伊吹が助けてくれたのか?ありがとう」
「いや、俺じゃなくて・・・」
そこで伊吹はようやく気づいた。少年のどこかで見た柔和な目元。
「ああ、そうか・・・。指さし地蔵って、そういうことか」
何が子どもをさらうだ。無責任にもほどがある噂だ。やはりお地蔵様というのは、子どもを守ってくれる存在だったのだ。
眠りこけたマコトを朋尋が背負い、伊吹らは旧校舎を後にする。
二階に佇む地蔵に、きちんと手を合わせてお礼をしたことは、言うまでもない。
作品名:夜のゆびさき 神末家綺談2 作家名:ひなた眞白