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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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「あの・・・」

戸惑いながら伊吹が語りかけると、少年はにっこりと笑った。細められた目は糸のようだ。少年が、右手をゆっくりと持ち上げる。そして。

「・・・上?」

少年のひとさし指は、まっすぐに天井を指差した。誘われるようにして天井を見上げた伊吹が視線を戻したとき、少年の姿は消えていた。彼のいた場所には懐中電灯だけが残されている。

「二階へ行けってこと・・・?」

伊吹は懐中電灯を拾い上げると、再び階段を上った。二階に辿り着くと、廊下の中ほどにまたしても少年が立っていて、うっすらと微笑んでいる。伊吹が近づくと、少年はすぐそばの教室を指差す。

「この教室・・・?」

そしてまたしても一瞬目を逸らした隙に、少年の姿は消えているのだった。
教室に入る。先ほどの教室と違い、そこには机や椅子は並べられておらず、物置きとして使われているようだ。大きなダンボール、木箱、使われなくなったマットや跳び箱などの体育用具が非常に適当に詰め込まれている。

少年は、その部屋の奥まった一角にいた。伊吹が近づくと、そばの納戸のようなものを指差す。納戸の二つの取っ手にはさび付いた南京錠が、鎖とともにかけられている。かなり古びており、簡単に壊せそうだ。
伊吹は乱雑に詰まれた一脚の椅子を手に取り、振りかぶって鎖めがめて振りおろす。

ガギンッ!

鎖と南京錠が壊れ、納戸が開く。真っ暗な闇から、かびくさい匂いと湿気があふれ出てきた。何十年もあけられていなかったのだろう。