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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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人間じゃない。伊吹にはわかる。

ギシ、ギシ、ギシ・・・

「・・・!」

近づいてくる。伊吹は逃げ出した。姿の見えない何かが追いかけてくる。

ダダダダダダダダダッ!

廊下を飛び出して、玄関ホールを目指して走る。足音もまた、全力疾走で迫ってくる。まるで鬼ごっこだ。

「・・・っ!」

玄関の扉に手をかけるが、見えない力で向こう側から押さえつけられているようで開かない。そんな、と絶望する伊吹の背後まで、もう足音は迫っている。

(くそっ・・・!)

恐怖が怒りに変わる。まるで遊ばれているようじゃないか。友だちを隠し、伊吹を追い回して怖がらせている何者か。伊吹は腹が立ってきた。足音の来る方向を振り返り、闇と対峙する。

「お前なんかに負けないからな!」

右手の人差し指と中指を立て、他の指を握りこむ。剣印。簡単な退魔法ならば伊吹にだって使える。自分にだって、お役目の血が流れているのだ。土御門家の血が。

「臨、」

剣印抜刀。九字を切る。最初の呪言とともに横一文字に印を切ると、緊張が消えうせて大きな声が出た。

「兵、闘、者、皆、陣、烈、前、行!」

集中力を極限まで高めて払いきった、最後の横一振り。それを放った瞬間に、自分に迫っていた闇が、瞬時に吹き飛ぶ気配を感じた。霧が晴れるようにして月明かりが差し込み、そこにはもう何の気配も感じられない。

「・・・やった・・・?」

ふうわりと降り注ぐ月光に魅入られて立ち尽くしていたそのとき。

「!」

目の前に、小さな子どもが立っているのに気づく。男の子だ。ふっさりとした髪と絣模様の着物は、どこか浮世離れしており、突然現れたこの男児が、生きた人間でないことはすぐにわかった。彼は懐中電灯を手にしている。伊吹が先ほど教室で落としてきたものだ。