小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夜のゆびさき 神末家綺談2

INDEX|12ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 


青白い月の下に佇むそれは、なるほど地蔵のようだ。伊吹は背筋がぞっとするのを感じた。別に霊気を感じ取ったとか、いやな予感がしたからとか、そういう意味ではない。ただ、ものすごくおかしいのだ。校舎の中に地蔵がある。そのミスマッチで意味不明な状況が、ただただ不気味で怖いのだ。

「よし、誰が指さされるか行ってみようぜ」

ノリノリのマコト。冗談だろう、と伊吹が息を呑んで止めようとしたとき、マコトの肩を引いたのは朋尋だった。

「よそうマコト。もういいだろ」
「何だよ朋尋、怖いのかあ?」
「こえぇよ。おまえ、怖くないわけ。俺らの中の誰かが、ほんとに消えるかもしんないのに?」

その言葉に、マコトはふと真顔になる。

「やだぜ俺。友だちが連れてかれたら。お地蔵さんてさ、意味があってあそこに存在してんじゃないかな。フキンシンっていうか、こういうのよくないんじゃないの」

朋尋の言葉に、マコトが恥じ入ったのか俯いてしまっている。やがて彼は朋尋の言葉をよくよく理解したのか、顔をあげて詫びた。

「・・・そう、だよな。ごめん・・・俺、悪乗りしちゃうから・・・」

その言葉に、伊吹は朋尋と顔を見合わせて笑いあう。よかった。もう帰ろう。そう目配せしあったとき。


カン、


「・・・!」

乾いた音が校舎内にこだまし、三人は棒を飲んだように立ち尽くした。

「なに・・・今の」

音の唐突さに、戸惑う。誘うように鳴った音。

「古い建物だから、音くらい鳴るだろ」

マコトがそう言った直後。


ギシギシギシッ


「わあ!」

伊吹らのすぐ背後、階段が鳴った。まるで誰かが駆け下りていったような。

「誰だっ!」
「マコトっ!痛っ・・・!」

マコトが階段を駆け下りていく。止めようとした伊吹は、きびすを返したマコトの腕にぶつかり尻餅をついた。

「伊吹、大丈夫か」
「それより、マコト・・・」

二人も慌てて階段を駆け下りる。伊吹の背中に、冷たい汗が流れた。何だろう、すごく嫌な感じがする。

「・・・あいつ、どこ行ったんだ?」

階下の開けた玄関に戻るが、マコトの姿は見当たらない。しんとした玄関ホールに、青い月明かりが降り注いでいるだけだ。

「そんな・・・おかしいよ、いま階段を下りたのに」

玄関ホールから両脇に廊下が伸び、教室やトイレの表示が見て取れる。隠れる時間なんてなかったはずだ。玄関を開ける時間もなかった。
彼は唐突に消えてしまった。そうとしか思えない。

「マコトー!どこだー!」

朋尋が呼びかけるが、返事はない。

「・・・朋尋、だめだよ。マコトはたぶん、どこにもいない」
「は?」
「わかるんだ・・・どこにもいない。校舎中を探しても、たぶん見つからない」