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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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消えるこどもたち



懐中電灯を片手に夜の中を進む。伊吹らの村よりは明るいが、この町だって田舎である。田んぼ、虫の合唱、星空の下を三人で歩く。
街灯の下、誰もいない公衆電話。その先に大きな影、学校が見えてきた。

「こっちの雑木林から、旧校舎のほうに抜けられるんだ」

得意げなマコトに続き、伊吹は朋尋と一緒に林に入る。月光が木々に遮られてしまい、暗い。懐中電灯の映し出す先に、今にもヒトではない何かが飛びこんでくるのではないかと、伊吹は胸がどきどきした。

「伊吹、大丈夫か」
「平気だってば・・・!」

親友の気遣いが、いまは苛立つ。やってやる、という投げやりな気持ちが逸り、伊吹は懐中電灯をぎゅっと握り締めた。

(俺、イライラしてる・・・朋尋は心配してくれてるのに。だけど、瑞なんかいなくたって・・・)

自己嫌悪と焼けるような衝動の狭間で、伊吹はまたしても瑞のことを考えている自分にまた腹が立つのだった。

「オッシャ、旧校舎発見っ」

マコトの嬉しそうな声に顔をあげると、懐中電灯のわずかな明かりに浮かび上がる建物の一部が見えた。旧校舎だ。昼間見るのとは全く異質な存在として、それは夜の中に堂々と鎮座している。それはまるで物言わぬ巨大な生き物のようで、伊吹は圧倒される。

「・・・お、開いてるぞ」

ギイ、と泣き声のように扉が軋んで開かれた。

「・・・・・・」

扉を閉ざすと、それまで聞こえていた虫の声がひたりと消え、そこには静寂だけが満ちている。青白い月の明かりが差し込む玄関。ほこりっぽく、湿った匂いが鼻をつく。ひんやりとした空気の中に、机や椅子などが乱雑に積まれているのが見えた。

「指さし地蔵は二階だ、行くぞ!」

マコトが玄関のすぐそばにある階段へと歩き出し、伊吹と朋尋は続いた。ぎしぎしと床がきしむ音だけが響いている。別世界に迷い込んだような違和感。

「・・・地蔵、ってあれかな」

二階に辿り着く。百メートルほどの長い廊下が続いている。脇には教室として使われていた部屋が並んでおり、廊下の突き当たりに、何か建っているのが伊吹にも見えた。

「地蔵、かな・・・」