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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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夜のゆびさき 神末家綺談2

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「なんとかしろよ穂積。俺をこんなふうにしたのはお前だろう」

化け物の俺を、人間にしたのは。
物のようだった自分に、感情と意思を与えたのは。
瑞、という名を与えてくれたのは。
――穂積。
この世でただ一人。この男だけが、瑞を。

「・・・!」

突然、身体に電気が走ったような感覚を覚え、瑞は立ち上がる。

「どうした?」
「・・・伊吹が、退魔法を使った、」

瑞と、お役目を継ぐ神末家の男の間には、目には見えない契約が、糸のように血を介して繋がっている。伊吹や穂積の身に何かあれば、すぐにわかるのだ。

「何してるんだ、あのバカは」
「お泊り会だと聞いているが」
「お泊り会というのは、退魔法を使うような状況に置かれるものなのか?」

バカな主だ。だが放ってはおけない。

「マコトくんち、だっけ」
「行くのか瑞」

穂積に止められ、瑞は振り返る。

「行くよ。俺はあいつの護法神だ」
「それが理由で助けにいくのか」
「・・・何が言いたい?」

訝しげに穂積を見つめるが、沈黙しか返ってこない。

「それが理由ではおかしいのか」
「伊吹が怒るわけだな」

頼んだぞ、とそれだけ言い放ち、穂積は屋敷へと消えていった。

なぜだ?それが理由だ。それ以外に理由が必要なのか。
瑞と神末家の血の契約は、護法神としてお役目を守ること。
それは瑞が神末家の先祖に調伏され、式神として仕えることになったときからの契約なのだ。

(契約だからだ。俺は神末の血には逆らえない)

それでいいではないか。伊吹は何が不満なのだ。

釈然としない思いを抱えながらも、瑞は月夜へと身を躍らせる。妙に気持ちが逸るのがどうしてかなんて、そんなことを考える気にはなれなかった。