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嘘でもいいよ vol.20 悪事

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嘘でもいいよ vol.5



再会した…とは言えないけれど、
高校時代の同級生とFBでまた出会い
チャットをするようになって、毎日があっという間に
過ぎていった。

高校時代は、彼は学校で人気者だったが
私は同級生に興味はなく、恋人は皆年上ばかりだった。

<麗ちゃんは、いつもそばにいたじゃん>

これは、彼の口癖。
私はそばに居いた記憶はなく、同級生の男友達の中にも
彼の存在はなかった。

通学の時、自転車で一緒になるくらいだったが
ある日、ふと彼がなぜそんな風に思っていたのか…
じっくり考えてみた。

もしかしたら、お互いに意識していたんじゃないのか…。
彼がすれ違う時に、目が合い。
校庭から校舎の窓を見上げれば、目が合い。
見つめ合っていた訳ではないけれど
そんな感じで3年間過ごしていたことで
彼が<いつもそばにいたじゃん>と、言うのではないか。

彼のことを真剣に考えれば、考えるほど
私の思いは重くなってしまったのかもしれない。

<ねえ、私たちFBでしか繋がってないでしょ?>
<うん>
<純君のメルアド教えて>
<それは、やめたほうがいいよ>
<なんで>
<わかるんだよね、メール来ると浮気してるって。態度でさ>
<あ…それは確かに>
<だから、お互い知らない方がいいと思う>
<自分の奥さん見てきたからさ>
<そうだね>
<浮気バレたら開き直って俺の前でも平気で喋ってたけどね>
<酷いね>
<麗ちゃんの家庭まで壊したくないよ>
<うん>

彼を癒したかっただけなのに
いつの間にか、思いが強くなっていって
メルアドを知りたがったり、自分のことを好きか確認したり、
チャットの端々に、重い言葉が積もっていったのかもしれない。

ある夜、彼が言った
<最近、重いんだよね…>

その一言に、私は胸が急に苦しくなって
次に打つ文字が、出てこなくなった。
PCの前で、じっと画面を見つめていると
彼が

<お~~い!麗ちゃんのことじゃないよ~~>
<お~~い>
<スマホの速度のことだよ~~!>

その後、私は何も気にしていないふりをして
彼といつも通りチャットで話していたのに

突然、彼の返事がなくなり…日付が変わってしまった。
いつも<おやすみ>の挨拶をしてから
ログオフする彼の返事を待ち続けた。

1時間経ち、2時間…3時間…
私は不安になった。

<急に、どうしたの?まさか こんなに突然…>
<さよならじゃないよね?…>

丸一日、彼はログインしなかった。
私は、久しぶりに目が腫れるまで泣いた。

一日目も、二日目も食事ができなくなっていた。
三日目に、彼が仕事で回っている街へ
彼を探しに出かけた。
運命なら、きっと会える。
これで最後にしよう…。

空は真っ暗で今にも雨が降り出しそうで
風も激しく吹いていた。

風がやんだら雨になるかな…。

私は彼がよく休憩で使うと言っていた
公園へ直行した。

いるわけがない…。
と、いうか正直実物の彼と再会していない。
彼を探すことはできなかったが
雨が降り出すまで、私は公園でスーツ姿の男性を
目で追っていた。

雨が降り出したが、もう私の涙は枯れ果てて
一滴の涙も残っていなかった。

けじめを付けることができた。
傷が浅くてよかった…。

突然現れた、少年に心を乱され
自分も少女に戻っちゃって、
笑っちゃうけど、
楽しくて、ドキドキして
人生折り返したけれど、まだこんな気持ちに
なれるんだ…。って
特した気分で、旦那と私のふたり分のケーキを買って
電車に飛び乗った。

「あなたの好きなイチゴショート買ってきたよ」
「どこ行ってきたの?」
「うん?渋谷」
「呼んでくれたら、お茶できたのに」
「雨降ってきたから…」

夕食のあと、旦那と熱い紅茶を淹れケーキを
ほおばった。

ここで、終われて良かったんだ…。
そう思ったのに…。

空白の3日間の後、彼が現れた。

<ごめんね、麗ちゃんが壊れちゃいそうだったから…>
<なんで戻ってきたの?>
<毎日、思い出してた…>


作品名:嘘でもいいよ vol.20 悪事 作家名:momo