小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

嘘でもいいよ vol.20 悪事

INDEX|12ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

嘘でもいいよ vol .10



私は純君に散々勧められたスマホを彼に内緒で
予約していた。

意味ないな…。

彼がいなくちゃ、使い道がない。

彼とのこの2か月…。
実際に会っていない彼とのリアルな思い出は一つもない。
明日から、彼と過ごしたチャットの時間を埋めることは大変そうだ。

半分はサヨナラの覚悟ができてきた。

想い出はチャットの履歴と、彼の送ってきた写真だけだ。
自然にこぼれてくる涙に、
目が腫れることばかり気にしながら彼とのやり取りを読み返していると
彼がログインした。

私は<待って!消えないで!>と声にならない声を
キーボードで慌てて打った。

<また、この間みたいに消えちゃうんでしょっ!>
<約束したから消えません。>

敬語を使うときは、怒りの真っ最中だ。

<消えないけど、レイちゃんには不倫は無理>

そう言われて、私はもう一度だけすがってみた。

<まだ、一度も抱きしめてもらってないんだよ>
<まだ、一度も触れてもいないんだよっ>
<スマホだって、買ったら教えてくれるって言ってたのに…>

<レイちゃんと愛し合うことは簡単なんだよ>
<……>

<私だって、会いたくたって我慢してるよ>
<レイちゃんが、我慢してることもわかってるよ>
<……>

<レイちゃんは、愛情が深すぎるから、多分無理だよ>
<純君の家庭を壊すつもりなんてないよ…>

私は、もう涙が溢れて文字が見えなくなって
涙でびしょ濡れの手の甲を何度も服で拭った。

<レイちゃんの気持ちが落ち着いたら、一度会おうと思ってたんだけどね>
<……>
<って、勝手だよね。ごめんね>

<わかった。楽しかったよ。ありがとう>

<俺はどこにも行かないから>

もうすぐ、旦那が帰って来るのに泣きはらした目で出迎えられない。

<ごめんね。もう涙が止まらなくて打てないから>

私は最後にそう打って、ログアウトした。
彼の返事はもう待たなかった。

「ただいま~!どした?」
私の顔を見た旦那が心配そうに言う。

「このエッセイ読んで泣いちゃった~
旦那がガンでホスピスで最後を迎える話」

換気扇を回して、玉ねぎを炒めた。


作品名:嘘でもいいよ vol.20 悪事 作家名:momo