嘘でもいいよ vol.20 悪事
嘘でもいいよ vol.9
私たちは、朝の<おはよう>から
昼の<ランチ何食べた?>
夕方の<今から帰るよ>
夜の<おやすみ>まで
毎日、欠かすことなくチャットすることが習慣になっていた。
習慣と言うのは恐ろしいもので
それを壊すことは考えられないが
二人の関係に、終わりは必ず来るのだから
いつも覚悟はしなくてはならない。
そして、忘れてはならないのは
私たちは、まだ再会してなかった。
夜は、彼の居場所はリビングだったので
家族が皆、自分の部屋へ戻り、ひとりになると
チャットすることができたが、
平日、彼は朝が早いので、寝る時間も勿論早い。
私は、彼が帰宅してから寝るまでの間、PCの前にジッとかじりつき
彼がチャットで話しかけてくれるのを(ただ待つ)
何時間も待って<レイちゃん、今日は寝ます~おやちゅみ>なんて
ことも度々ある。
人は愛している時には我慢できたことも
愛されてると思った時から
我慢できなくなることもある。
少しでも、私とチャットしてくれようと
1時間に1度、言葉をかけてくれる彼。
家族が傍にいて、チャットできないなら
今夜は終わりにして、早く自由になりたい私。
もう、文字や文章で、お互い
怒っていることや、ふてくさっていることなんかは
気が付くくらいになっていた。
私がふてくさると
<やっぱりレイちゃんには不倫は無理なんだよ>
おやすみも言わずに、彼はまたログインしなくなった。
もう私は覚悟した。
前回、彼が消えた空白の3日間とは今度は少し違っていた。
<純君のリビングは私には見えないから、一言、二言、
返事を返すことができるならば、今、みんな居るから
チャットできないよ、って教えてくれたら納得するよ。
だんだん、純君の生活リズムがつかめて来たのに…。
でも、もうサヨナラでもいいよ。読んだら返事だけは頂戴。
この間みたいに、サヨナラも言わずに消えるのだけはやめて>
その日は、日曜日なのに彼は朝になってもログインせず、
私のチャットは開封されず、未読のまま、夕方になってしまった。
作品名:嘘でもいいよ vol.20 悪事 作家名:momo