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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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そらのわすれもの4

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ガラッ!!
その時、教室の扉が開く音がした。静かに怒る琴恵が入ってきた。薄くて形の整った口許が歪んでいる。
「見ていたのか…。」
「魔力を感じて、駆けつけて見れば、精霊体になった知秋が横を走って行ったわ…。その後、それを追いかける転校生もね…。」
話しているうちに怒りが限界に達してしまったらしく、琴恵は手を振りかざした。すると、竜也と琴恵の間に、強い風が吹き、竜也を壁に叩き付けた。痛そうに竜也は体を九の時に曲げる。それを見ると、琴恵は竜也の元に走っていき、胸ぐらを掴み掛かった。あっと言う間の出来事だった。容赦というものが全く感じられない。琴恵は細身で力が無い為、それで竜也の身体が浮くことは無いが、勢いのみで言えば、持ち上げられてもおかしくないレベルだ。

「術札で知秋の力を増幅させたね!知秋になんて事をしてくれたわけ!?なんで、あの転校生の前で敢えて魔法を使った!?あれじゃ、知秋が普通に生活できなくなるじゃない!?」
琴恵は竜也を揺さぶる。竜也の眼鏡は、何回か鼻の辺りで宙を舞い、床についには落ちた。
「普通に生活って…いい加減、お前が何を言ってるか分からないよ…。」
竜也は言い返すと、琴恵は押し黙った。
「母さんが殺されて、琴は悔しくないのか!琴にとって、うちの母さんはそんなものだったのか!」
「…。」
琴恵な静かに歯軋りをした。言葉が見付からず、悔しそうな顔で竜也を睨み付ける。
「じゃあ、どうするの?」
「母さんを殺した奴を見つけて同じ目にあわせてやるんだ。」
それを耳にすると琴恵は竜也の胸倉を更に引っ張って、顔をこれでもかという位に近づける。
「殺しちゃうんだ。ふーん。知秋ちゃんを利用して、人殺しするんだね。」
竜也は目を反らした。その姿を確認すると琴恵は、竜也から手を話して、後ろを向いた。
「…お前さ…。」
「何?」
琴恵は振り替える。
「なんで、知秋を学校に行かせてるんだ。理事長に取り入って。」
「仕返しかもね?」
竜也の顔が青くなる。
琴恵は笑った。
「もう一生、小さな事でも協力はしないわ。私が貸した力をろくな事に使えないんだから、当たり前だよね。」
「琴!?」
「精々、空の精霊である知秋ちゃんの機嫌でも伺うことね。赤子の時から世話してる割に契約も済んでないようだけど?ざまぁだね!馬鹿みたい!」
琴恵は性格悪く笑った。
「お前は本当に何も分かってないよ。琴!」
竜也は叫んだ。
「お互い様でしょ…。」
琴恵は悠々と教室のドアに向かうと、そのまま出ていった。扉は開けっぱなしになっている。
廊下を出て、しばらくすると、琴恵は教室の方を振り返った。
「竜也のこと、あんなに好きだったのに…今は嫌いな気持ちしかない…悲しいよ、知季さん…。ごめんなさい。」
立ち止まり、ぽつりと呟くと、琴恵は目元を少し袖で拭った。
それから勢いよく走り出した。

知秋を探す為に。
ここから逃げる為に。