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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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そらのわすれもの4

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次の瞬間、知秋がいた所には、知秋よりも幾分背の低い女の子が立っていた。体型は、男とも女とも判別しにくいシルエット。髪の毛は有り得ない程、赤い。それが好き勝手な方向に跳ね、まるで、燃え盛る炎を連想させた。

その女の子は、優太と同様に眩しさに一瞬目がくらみ、光を避けるように身体を捻って、腕で顔を覆っていた。ある程度光が落ち着き、少女は腕をどかすと、そこには金色にキラキラと輝く瞳があった。その瞳を飾る睫毛は付け睫でもしているのかという程、ボリュームがある。桃の様に柔らかな頬と薔薇の様に深みのある赤い唇も一度見たら忘れられない程、印象的な顔立ちだった。不自然であるのにも関わらず、不思議なくらい美しく、魅力的だ。
「…。」
優太は、一瞬にして目を奪われてしまった。

しかし、その姿をした張本人は、自分の視界の低さや胸元にかさる髪を見ると、目を見開き、顔を腕で覆い、勢いよく教室を飛び出した。

「これは…?」
優太は、少女が出ていったドアをしばらく眺めてから、竜也に視線を移した。顔が心なしかひきつってる。

「どういうことですか?」
「見ての通り、彼女は人間じゃないんだ。」
竜也は、そう言うと丁寧に机を直し始めた。
「わざわざ見せた理由は分かるな?彼女に近付かないで欲しい。」
「…。」

優太と竜也は、しばらく、見つめあった。
「とりあえず、知秋さんに会ってきます。」

優太は、そう言うと、教室から出ていった。

教室に竜也のみが取り残されていた。

計算外だ…。
竜也は、乱れた教室の中で自虐的に笑った。
知秋の姿を見て、優太が怯えてくれればいいと思っていた。

そうすれば知秋もショックを受けて、人間としての生活を終わりに出来ると考えていた…知秋も自分も無理をせずに済むと思っていた。

「もう終わりにしたかったのにな…。これじゃ返って辛いじゃないか…。」
走馬灯の様に知秋の学校での姿を思い出すと、竜也は膝をついた。