覇王伝__蒼剣の舞い2
拓海の思考回路が、久しぶりに迷走を始めた。
「どういうこったぁ!?」
レオの怒鳴り声と、何かがぶつかる音が村はずれに響く。
「少しは手加減しろよ!子供なんだぜ、俺はっ」
「フン、お前が普通の子供だったらな。ややこしくなる事は理解ってるだろう!?」
「あいつらは気付いちゃいないようだぜ」
「そういう問題じゃねぇ。なんで“お前”なんだぁ?」
「さぁな。だが、お陰で動きやすくなったぜ、レオ。俺はこの通りの子供だ。中の奴ら相手に一合戦したら今度こそ終わりだ。奴らの衣は、普通の剣じゃ斬れねぇ。だが、方法が一つだけある。あいつだ」
「やっぱ、お前は普通じゃねぇ…」
「あんたに、鍛えられたからな」
セイは、ニッと嗤って四獣聖と拓海がいるハオンの家に戻った。
「僕がぁ!?」
遺跡潜入に、拓海が指名されて本人が思わず語尾を上げる。
「まさか、みんなで乗り込むわけにもいかねぇだろ」
「でも何で、僕なんです?レオンさま」
「お前が、玄武の息子だから___」
「え…」
「あ、いや。拓海、お前ならあいつを連れて帰れる気がする。あれでもヤツは、お前に期待してるんだぜ。それに、お前は失敗を挽回したいと思ってる。違うか?」
そうだ、僕は。
自分が白い影に操られて、清雅の龍王剣を彼らに渡して清雅を無防備にした。その所為で彼は捕まったのだ。そんな自分を、彼は未だ期待していてくれるのなら___。
「行きます。で、後は」
「俺だ」
「セイ?」
「中の事は詳しいぜ。それに」
「まさか、清雅さまの居場所を…」
「あぁ。本人に会ってる」
「拓海、こいつは唯の子供じゃねぇ。獅子の隊じゃ、なかなかの腕だったんだぜ」
「レオ、今の俺は唯の子供だよ。中まで案内して、指示するだけだ」
「充分、普通じゃねぇよ」
つまり、十代コンビで遺跡に潜入し、清雅を助けろと云うのだ。
四獣聖が行けないのは、中に龍王剣があるからだ。共鳴し合ってしまう事はこの場合、弱点になる。救出は慎重に気付かれないよう行う、それが失敗してしまう事になる。
故に、拓海なのだとレオは云う。
だが不思議と、拓海に恐怖や不安はなかった。
この安心感、以前にも何処かで感じた。あれは、いつだったか。
二人が、秘密の通り道へ向かった後、狼靖がレオに近づいた。
「___さすがです」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍